

助教
野木 武洋
NOGI Takehiro
臨床と研究の両立
臨床で得られる視点こそが、
研究を本当に価値あるものへと導いてくれる。
私は鹿児島大学歯学部を卒業後、同大学附属病院で研修し、東北大学の歯科麻酔科に勤務しました。歯科麻酔学会にて、当科の前任の診療部長である長坂浩先生と出会い、長坂先生の麻酔科医療に対する深い理念や情熱に強い感銘を受けたことがきっかけとなり、当院の麻酔科に入職しました。
私が理想とする研究の在り方は、日々の診療の中で芽生えた疑問を、自らの手で検証するというものです。日常診療を行う中で、「これはどうなんだろう?」とふと感じることがあっても、多くの場合はそのまま流れてしまいがちです。しかし、その問いを見過ごさず、限られた時間の中でも少しずつ掘り下げていく─そんな姿勢を大切にしています。
特に大きなきっかけとなるのは、患者さんからの素朴な問いかけです。教科書に載っていないような質問に、すぐ答えられなかったとき、「まだ誰も答えを持っていないのではないか」と思い至り、それが新たな研究のヒントになるのです。
そして、現場から生まれた疑問だからこそ、その研究は必ず患者さんの役に立つ。臨床に携わっていないと、社会的意義のあるテーマかどうか判断しづらくなってしまいます。だからこそ私は、臨床と研究を両立することに大きな意味を感じています。日々の診療で得られる視点こそが、研究を本当に価値あるものへと導いてくれるのです。

現在進めている研究
患者 さんの問いが、研究のきっかけに。
現在、全身麻酔がワクチン接種後の免疫獲得に及ぼす影響について、科研費をいただき研究を進めています。このテーマに取り組むきっかけは、手術を予定していた患者さんから「ワクチンを打ったら、どのくらいの期間は全身麻酔を避けた方がいいのか?」と尋ねられた際に、明確な根拠を持って答えられなかったことでした。
ワクチン接種の直後に全身麻酔を施行すると、麻酔による免疫抑制の影響で抗体価の上昇が抑制される可能性があることが、麻酔科学の分野では定説となっています。麻酔薬のセボフルランとデスフルランが生体に与える影響を遺伝子学的に調べたところ、免疫抑制に差が出るということがわかりました。私はこの点に着目し、より免疫抑制の影響が少ない麻酔薬を選択することで、ワクチン接種後の抗体獲得を妨げずに済む可能性があると仮説を立て、ゲノム基礎医学の奥田晶彦教授の協力を得て、研究を進めているところです。
当科では、臨床系の研究はもちろんのこと、基礎系の研究についても気軽に相談できる環境が整っています。テーマ設定から実験手法、データ解析に至るまで、段階に応じたサポートを受けることができます。研究に対して「ハードルが高そう」と感じている方も、まずは気軽に相談することから始められる雰囲気があります。

学内グラント受賞の成果発表の様子
研究における当科の魅力
自由度の高さと充実の支援体制、
その両立がここにある。
当科の大きな魅力の一つは、「自分のやりたい研究ができる」という自由度の高さにあります。研究に興味はあるけれど、上級医の方針に従って、指示されたテーマに取り組まざるを得ない場合も多くあると聞きます。このような場合、自分の関心やモチベーションと結びつかないために、途中で心が折れてしまうケースも少なくありません。その点、当科は非常に柔軟で、医局員の「この研究をやってみたい」という気持ちを尊重してもらえるため、自分の関心に基づいたテーマで主体的に取り組むことができます。興味を持って進めるからこそ、調べる過程も深まり、研究そのものが楽しく感じられますし、成果にもつながりやすいと感じています。もちろん、必要なサポートやアドバイスは惜しまず受けられる環境が整っているため、研究経験が少ない方でも安心して挑戦できます。
